三種の神器は焼き鳥・団子・卵焼き
あんまり暖かな日だったので、もう一軒の茶店を思い出した。
今度はお気楽に美味しい。
栃木市は太平山の頂上に鎮座まします太平山神社門前に、妙な取り合わせの名物があるというのを聞いて、一も二もなく飛んでいった。
「三種の神器っていうんだよ」
と地元の人々はいうが、何の脈絡でこの3つなのか部外者にはとんとわからない。
とまれ、山の中腹に並ぶ茶店の一軒に入ってみた。
壁に貼られた献立を指して注文すると、私たちの前に並んだのは、小皿に盛られた焼き鳥と卵焼きとあん団子だった。
呑んべえの旦那と甘党の奥さんと巨人大鵬卵焼きの息子を想定した取り合わせか?
店のご主人に伺って、ようやく謎が解けた。
「そもそもは太平山神社に、鶏がたくさんいたのが始まりなんです」
つまりこうだ。その昔、夜中に鳴く鶏は不吉なものとして、神社に奉納されたのだという。
それが高じて、太平山神社の境内には鶏が大繁殖し、卵がゴロゴロ転がる事態に。
そこで付近の茶店がこれを集めて卵焼きを客に出すことになったという。
同時に神社には米も奉納されたので、団子の原料として使われたのだとか。
「そのうちついでに焼き鳥も作っちゃえってことになりまして」
ご主人はそういって笑うのだった。
太平山には他に何軒も茶店があるが、どこも3種の神器を出しているようだ。
面白いので、数軒で神器を食べてみた。
卵焼きの厚みや味は、それぞれに個性がある。
せっかくなので、神社にお参りした。
見れば境内には白い鶏が数羽、歩き回っている。
「さすがにあれは食べませんよ」
と、神社の方はにこやかに教えてくれた。
そもそも太平山は関東平野の一番端っこあたりに位置していて、眺望絶佳な地である。どの茶店も室内はもとより、丘の上にベンチとテーブルが並べられている。
参拝後、再びもう一軒立ち寄って、雲上の眺めに舌鼓を打った。
暖かくなったら、もう一度訪れて風景を眺めながらのんびりしたいなあ。
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そういう訳でその日の私が食べたのは
・太平山名物卵焼きと焼き鳥と団子(中腹の一軒の卵焼きが、甘みも厚さも私好みだった)
・甘酒
実際食べてみると、かなり不思議な食い合わせだ。