牛と稲わら

牛からセシウムが検出された。
ああ、これのことか、と、いくつかの言葉が脳裏をよぎった。

一つ目は、とある研究者にお話をうかがいに行こうと連絡した時のことだ。
「半年後にいらっしゃい。いろんな事態が明らかになってるはずだから」
と、いわれた。

もうひとつは、ほんの数週間前に、
神奈川県の畜産について調べていた時のことだった。
県農政課の担当者は、胸を張ってこういった。
「県内の肉牛は、品質を良くするために、
稲ワラを餌の1割ほど食べさせています。
地元の稲が足りない時は、東北から仕入れているんです。
あちらからは大量に購入できますからね」。

東北では稲わらを飼料として出荷するのが、
ひとつの産業であることを、この時初めて知った。

気になって、上記の担当の方に電話した。
神奈川県では、大震災以前の稲わらしか仕入れておらず、
ちゃんと雨ざらしではなく保管されていることが、
県の調査で明らかになっているという。
それにもともと乳牛には与えていない。
だから「神奈川県の肉牛・乳牛は安心です」とのことだ。

「県産牛肉は「安心」、汚染稲わらの流通なし/神奈川」(神奈川新聞社)

ちょっと検索してみれば、
国産稲わらの用途別利用状況(平成13年度出来秋分ー古くてごめん)は、
約9000トン中、田んぼへのすき込みなどが74,9%、
飼料用に12,1%、敷料用4,7% 加工用1,1% たい肥用7,2%とある。
稲わらは、飼料に肥料に、またワラ草履やカッパの材料など、
大昔から貴重な資源だった。
私たちが村を巡っているころにも、
各地で稲わらの七変化ぶりに驚かされたものだ。

肉牛への投与にしたって、別に餌代を浮かす為ではなく、
牛の脂肪分をきめ細かく色よく仕上げるためであり、
引き換えに牛糞を堆肥として農家に分ける、
見事な循環型農業を構築してきた。
そもそも農家は肥料を取るためと農耕役として、
化学肥料や農耕機具が発達する昭和30~40年代までは、
牛を数頭飼うのが普通だったのだ。

今回も、この循環型農業を丁寧に進める農家がやられた。
宮城県は飼料用稲わらを乾燥させるのに、ちょうどいい気候風土らしい。
本来は年内に片付けるものだが、
天候不順で春先まで野外に置いた物がやられたとか。
でも今日日、稲の収穫はコンバインで刈り取りから土に漉き込むことまで、
一気に機械任せが主流だから、
わざわざ稲を残して乾燥させるのは、ひと手間余分な作業なのだと素人目に考える。
つまりある意味、志の高い農家なのかと。
しかし現実は容赦ない。

テレビニュースによれば、
以前輸入稲わらが原因で口蹄疫が発生したとみられることから、
日本では国産稲わらを推奨していた。
稲わら、牧草、トウモロコシといった祖飼料の自給率を上げ、、
平成32年までに国内自給率を、
現在の26%から38%への向上を目指していたらしい。
家畜飼料の自給率は、そのまま日本の食料自給率に大きく連動しているのだ。

神奈川県の担当の方は、
「うちは粗飼料を国産物100%を目指していたんですが・・・」
と、肩を落としていた。

救いなのは、きれいな飼料を与え続ければ、
体内のセシウムはやがて排出されるということ。
ま、その糞尿はどうなの?という課題はあるが。
あ、これ、人間も同じですな。



何だかこの頃、三好達治の詩が頭に浮かぶ。

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降り積む 
     次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降り積む

                  泣けてきた。

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by sibamataumare | 2011-07-22 13:03 | 食べもの